虫歯はどうやって進行するのか
虫歯はどうやって進行するのか
虫歯の進行は癌の進行と同じ?
患者さんの中には、虫歯はがん細胞のように、放っておくとどんどん進行するものだとイメージされている方も多いのですが、
実は全く違います。
がん細胞というのは、生きた細胞がどんどん細胞分裂して増殖していきます。
歯は生きた細胞ではありません。ただのカルシウムの石みたいなものです。虫歯というのは石の表面で化学反応が起こり、溶けているだけなのです。
虫歯菌が歯を食べている訳ではありません、虫歯菌が出す酸でカルシウムが溶けているだけなんです。
ですから、
進行を止める方法は、化学反応を止めること
がん細胞だと、がんの細胞を根こそぎ取り除かないと進行を止めることはできず再び増殖してきますが、
虫歯は勝手に増殖するわけではないので根こそぎ取り除かなくても進行を止めることができます。化学反応を止めればいいだけです。
化学反応を止める方法は
酸を無くすことです。
虫歯菌は、糖を分解して酸を出します。ですから、
糖を与えなければ、酸は出ません。
これをうまく利用したのが皆さんご存知のキシリトールです。
キシリトールも糖の一種です。キシリトールがなぜ予防効果があるかというと、他の糖のかわりにキシリトールを食べた虫歯菌は酸を出せなくなるということを利用してるのです。
うちの息子(4歳)は寝る前の歯磨きの後キシリトールをあげています。
歯磨きをあまりさせてくれない子でしたが、虫歯はゼロです。かなりの効果を実感します。
息子にあげているのはこちらの商品です。他のものでもいいですがキシリトール100%のものにしてください。他の糖が入っていたら逆効果ですよ。
虫歯というのは虫歯の菌が出す酸で石に穴を開けるという化学反応だということがわかりました。
そのイメージがあれば、様々なことがわかってきます。
まず、
虫歯の好発部位がなぜ好発部位なのか
好発部位はいずれも自浄性が働きにくく、食べカスが停滞する場所です。
つまり、そういったところは、虫歯菌に常に餌である糖を与えていることになります。
さらに、そこで発生した酸は自浄性が働かないから停滞しそこにとどまることでずっと化学反応を起こし続けることが出来るわけです。
虫歯をどこまで削ればいいか
ベテランの先生であれば、虫歯を取り残して埋めても進行しないことがあるのを知っています。これを頷けない先生はよっぽど真面目かセンスがないかのどちらかでしょう。
虫歯を何で削るか。その大義名分は進行を止めるためです。
虫歯はがん細胞とは違います。進行を止めるためには化学反応を止めることです。
穴が空いて自浄性の働かない場所を封鎖し、虫歯菌に糖を与えないようにすることが必要です。
穴を埋める材料は、虫歯で柔らかく感染してしまった歯質には接着しません。
だから、接着させるために、くっつく歯の面をださないと封鎖できません。
そのために削るんです。
極論、内部の虫歯を多少残しても辺縁のくっつく歯面さえ出せて封鎖が成功したら、虫歯の進行は止められます。だって餌となる糖がありませんから酸が出来ようがありません。化学反応は起こりません。
歯を削らない、神経を取らないために
基本的には虫歯に感染した歯質は削りますが、神経スレスレの虫歯の歯の神経を残すためにはそういう工夫が必要です。
ドックスベストセメントといって、殺菌力のある詰め物があります。神経スレスレの虫歯を全て取り除くと神経まで到達する場合、虫歯を残してドックスベストセメントを埋めると虫歯菌を殺して進行が止まるというものです。
当然、辺縁は封鎖できていないと何を使おうが進行はします。
逆に言えば、辺縁が封鎖できていたら、何を使おうが進行は止められます。
穴を封鎖する詰め物は代表的なものはコンポジットレジンという光で固まる樹脂があります。これが接着するのならばベストです。
ただ、水分に弱いので、湿っているような場合濡れた環境でも固まるような材料を選択し封鎖を図ります。適材適所です。様々な材料とそれを開発したメーカー、研究者に感謝です。